JTTA指導者養成委員会


第5回 「ラリーの特徴をデータと映像から考えてみよう」

前回に引き続き、委員長の吉田和人氏のコラムです。自分やライバルのラリーの特徴をデータと映像から考える方法を紹介しました。

(日本卓球協会スポーツ医・科学委員会副委員長 飯野要一)
2020.05.10 更新


第5回 「ラリーの特徴をデータと映像から考えてみよう」

日本卓球協会スポーツ医・科学委員会委員長
吉田和人(順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科)
(前所属:静岡大学学術院教育学領域)

前回のコラムでは、各打球場面の出現率からみた卓球ラリーの特徴を紹介しました。また、それぞれが自分の試合についても同様な分析を行うと、自身のラリーの特徴を理解できることをお伝えしました。
試合を分析的に見ることができると、ラリーの内容と得失点の関係から、選手の強い所や弱い所に気付くようになります。これにより、卓球を始めて間もない選手同士の試合であれば、「フォアハンドと比べ、バックハンドにミスが多い」「サービスからのラリーでは得点できているけれど、レシーブからのラリーでは失点が多い」など、一目瞭然となることが増えるでしょう。一方、自分よりはるかに競技力の高い選手同士の試合については、どのラリーも「すごい」と感じられ、「分析は難しい」と考えてしまうかもしれません。しかし、そのような試合であっても、気付いたことを記録しながらその動画を繰り返して注意深く観察すると、得点や失点の傾向が見えてくるようになります。こうした分析を繰り返すことにより、試合における選手の考える力の向上が期待できます。
選手の分析力を高める方法として、ライバルチームの選手を分析し、その結果をもとにミーティングで意見交換をすることは有効です。こうしたミーティングはまた、次の大会に向けて、ライバルチームの選手の強い所や弱い所などの特徴をチームで共有するという意味もあります。
吉田・山田(2018)は、ラリーの特徴を把握するための有用な分析例として、以下を示しています。
(1) サービスからのラリーの得点率、失点率
(2) レシーブからのラリーの得点率、失点率
(3) サービスの種類と得失点の関係
(4) レシーブの種類と得失点の関係
(5) 打球のコースと得失点の関係
これらは、紙と鉛筆を用意して、簡単な記録と計算をすることで可能となります。ミーティングでは、分析者が「〇〇のデータから、△△と考える」と述べ、その内容について、チームメートと検討します。その際、対象となった試合映像も準備しておく必要があります。例えば、A選手の試合を分析し、「あるサービスが相手に返球されなかった割合は25%であった」というデータを得たとします。この場合、「A選手のサービスが優れていた」か「対戦選手が単純なミスをしていた」かにより、その意味は大きく異なります。そこで、複数人で映像を確認することが必要となります。ここで大切なのは、データを基に考え、その考えを必要に応じて映像で確認することです。
ラリーの特徴をデータと映像から考えること、その結果を活用することは、卓球の競技力向上に有効であると言えます。関心のある方は、挑戦してみてください。

文献
吉田和人・山田耕司(2018)映像を強化に活かす:情報戦略サポート.日本卓球協会編,2017-2018 強化指導指針.日本卓球協会:東京, pp. 42-43.